変動金利を選ぶとき、「5年間は返済額が変わりません」「上がっても1.25倍までです」という説明を受けることがあります。安心できる仕組みのように聞こえますが、この2つのルールは返済額を抑える仕組みであって、支払う総額を抑える仕組みではありません。ここを取り違えたまま借りると、5年後や完済間際に想定外の金額が出てきます。
結論から言うと、私は変動金利そのものを避けるべきだとは考えていません。私自身も変動金利で組んでいます。ただし、5年ルールと125%ルールは「負担をなくす仕組み」ではなく「返済額の急増を後ろにずらす仕組み」です。私なら、自分が借りる商品にこのルールがあるか、未払利息をどう精算するかを契約前に確認してから選びます。
この記事では、金利の見直しと返済額の見直しがなぜずれるのか、125%ルールで何が守られて何が守られないのか、未払利息が出るとどうなるのかを、実際の数字を使って順に説明します。金利タイプと借入先を比べる手順は「住宅ローンはどこで借りるか【2026年版】金利だけで決めない比べ方を施主が解説」にまとめています。
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金利タイプで悩む前に、そもそもいくら借りるのかが決まっていないと比較になりません。同じ条件で複数社から間取りと資金計画を取り寄せると、借入額の幅が先に見えます。金利の話はそのあとです。
借りた人の75.0%が変動型、ただし約半数が返済額の変わり方に不安
まず、いま実際に借りている人がどうしているかを見ておきます。住宅金融支援機構が2026年1月に行った調査によると、2025年4月から9月までに住宅ローンを借りた1,237人のうち、選んだ金利タイプは次のとおりでした。
| 金利タイプ | 割合 | 前回調査比 |
|---|---|---|
| 変動型 | 75.0% | ▲4.0ポイント |
| 固定期間選択型 | 14.9% | +2.7ポイント |
| 全期間固定型 | 10.1% | +1.3ポイント |
同じ調査で、今後1年間の金利の見通しを聞いた項目では、「現状よりも上昇する」が73.7%で、前回調査より8.0ポイント増えています。利用者全体で見ると、変動型の利用割合と金利上昇を予想する割合が、どちらも4人に3人ほどという状態です。
理解度の数字が示していること
この記事で本題にしたいのは、その次の項目です。変動型と固定期間選択型を利用した1,112人に、金利リスクをどこまで理解しているかを聞いた結果が公表されています。
| 項目 | 十分に/ほぼ理解している | 不安・理解していない |
|---|---|---|
| 適用金利がどのルールで変わるか | 57.2% | 42.6% |
| 返済額がどのルールで変わるか(5年・125%ルールなど) | 52.9% | 47.2% |
| 返済額がどれくらい増えるか | 47.9% | 52.0% |
| 優遇金利の適用ルール | 44.4% | 55.6% |
出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月調査)」。n=1,112(変動型・固定期間選択型の利用者)。「不安・理解していない」は「理解しているか少し不安」「よく理解していない」「全く理解していない」の合計
注目したいのは、調査の設問に「5年・125%ルール」が明示されていることです。それだけ、借りる側が押さえておくべき前提として扱われています。そして実際には、利用者のおよそ半数が返済額の見直しルールに不安を残しているという結果でした。
ここから先は、その中身を順に見ていきます。
多くの商品は金利を半年ごとに見直し、返済額を5年間据え置きます
全国銀行協会の解説では、変動金利型住宅ローンの金利は経済情勢などに応じて多くの金融機関で半年ごとに見直され、元利均等返済の返済額の見直しは5年ごととされています。この2つの周期がずれていることが、話をややこしくしている原因です。
動かないのは返済額であって、金利ではありません
ここを取り違えている方が多いところです。「5年間は変わらない」と説明されると、金利が5年間固定されるように聞こえます。実際には違います。
- 金利……多くの商品で半年ごとに見直され、商品ごとに定められた適用時期から新しい金利で利息が計算されます
- 毎月の返済額……5年間は同じ金額のままです
つまり、金利が上がっても口座から引き落とされる金額は変わりません。変わらないので、上がったことに気づかない方もいます。負担が消えたのではなく、見えなくなっているだけです。
返済額の中身が静かに入れ替わります
では何が変わるのかというと、同じ返済額のなかの元金と利息の比率です。
毎月の返済額は、元金の返済分と利息分に分かれています。金利が上がると利息分が増えます。返済額の合計は変わらないので、その分だけ元金に充てられる金額が減ります。返済額は同じでも、借金の減り方だけが遅くなっていくということです。
この状態が5年続いたあと、6年目の見直しで初めて返済額が変わります。そのとき提示される新しい返済額は、減りが遅れた分の残高を、残りの期間で返し切る前提で計算し直されます。だから上がり幅が大きくなります。
125%ルールで上限があるのは、月々の返済額だけです
その6年目の見直しで働くのが125%ルールです。全国銀行協会の未払利息に関する解説では、5年ごとの返済額見直し時に125%ルールを設ける商品があり、増加はそれまでの返済額の25%アップが上限になるとされています。
数字にすると分かりやすいので、私のほうで試算しました。
借入5,000万円・35年で試算するとこうなります
金額の前提を先に決めておきます。住宅金融支援機構の2025年度フラット35利用者調査では、土地付注文住宅の平均所要資金は5,313万円、手持金は481.1万円でした。平均所要資金から手持金を単純に差し引くと4,800万円台になるため、試算額を5,000万円に置きました。
そこで借入5,000万円、返済期間35年、当初金利0.5%、元利均等返済、ボーナス返済なしという条件で計算します。当初の毎月返済額は約129,793円です。この条件で5年間返し、6年目に金利が上がった場合の返済額を並べます。
| 6年目の金利 | 残り30年で完済する試算額 | 125%の上限 | ルール適用時の返済額 |
|---|---|---|---|
| 1.5% | 149,718円 | 162,241円 | 149,718円 |
| 2.5% | 171,409円 | 162,241円 | 162,241円 |
| 3.0% | 182,898円 | 162,241円 | 162,241円 |
| 3.5% | 194,802円 | 162,241円 | 162,241円 |
筆者試算。元利均等返済・ボーナス返済なし。5年間は当初金利0.5%で返済し、6年目に記載の金利へ変わった場合。優遇金利の変動や手数料は考慮していません
金利が1.5%までなら、上限には届きません。返済額は約15万円になり、そこで完結します。
問題は2.5%以上です。残り30年で返し切るための試算額は171,409円ですが、125%ルールを適用すると返済額は162,241円に抑えられます。差額の9,168円が別途請求されるわけではありませんが、その分だけ元金の減りが遅くなります。金利3.5%では試算額との差が月32,561円です。この差は「免除額」や「未払利息」ではなく、完済に必要な返済ペースとの差を示しています。
総返済額に上限はありません
ここが記事のいちばんの要点です。125%ルールが上限を設けているのは、毎月の返済額だけです。借りたお金と利息の合計、つまり最終的に払う総額には、どこにも上限がありません。
返済額が抑えられた期間は、元金が当初計画より多く残ります。その後の金利低下や返済額の見直しで解消できなければ、返済終了時点にも残高や未払利息が残る可能性があります。精算時期と方法は金融機関ごとに異なるため、契約内容の確認が必要です。
返済が終わったあとの生活資金まで含めた考え方は「注文住宅完成後に残す現金【2026年版】生活防衛費の計算方法を施主が解説」で整理しています。
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金利がどう動くかは誰にも分かりません。動かせるのは借入額のほうです。同じ要望で複数社に見積もりを依頼すると、同じ間取りでも総額に差が出ることがあります。その差がそのまま返済額の余裕になります。
未払利息が出ると、元金はまったく減りません
金利の上がり方がさらに大きい場合、もう一段階先の状態が起こります。未払利息です。
全国銀行協会の説明では、返済額が変わらない5年の間に急激な金利上昇が起きると、利息部分の金額が返済額よりも多くなってしまう可能性があるとされています。この返済額を上回った利息部分が未払利息です。
そして、こう書かれています。未払利息が発生すると、返済額からローンの元金部分に充当される金額はゼロになります。毎月きちんと引き落とされているのに、借金の残高がまったく減らない状態です。
金利が何%まで上がると起きるのか
抽象的な話に感じられるので、先ほどと同じ条件で計算しておきます。借入5,000万円・35年・当初0.5%、毎月返済額129,793円という前提です。
| 時期 | ローン残高 | 未払利息が出始める金利 |
|---|---|---|
| 借入直後 | 5,000万円 | 年3.12%超 |
| 5年返済後 | 約4,338万円 | 年3.59%超 |
筆者試算。返済額が当初のまま据え置かれている状態で、1か月分の利息が返済額を上回る金利水準
ここで一つ、知っておくと役に立つことがあります。この金利水準は、借入額を変えても動きません。3,000万円でも5,000万円でも、当初0.5%・35年という条件が同じなら、未払利息が出始めるのは同じ年3.12%です。返済額も残高も借入額に比例して増えるため、両者の比率が変わらないからです。
つまり未払利息が出るかどうかは、借入額の大小ではなく、当初金利と返済期間で決まります。当初金利が低いほど、また返済期間が長いほど、未払利息が出やすい設定になります。低金利で長期に借りるほど、金利上昇の影響を受けやすいということです。
この試算条件では、未払利息は適用金利が3%台まで上がって初めて発生します。ただし、発生水準は当初金利と返済期間によって変わるため、すべてのローンで3%台になるわけではありません。この例では、未払利息より先に、125%ルールによって元金の減りが遅くなる影響が表れます。
毎月返済額が据え置かれている間は、残高が減るほど未払利息が出る金利水準が上がります。この試算では、借入直後より5年返済後のほうが発生水準は高くなりました。ただし、返済額を再計算した後や返済条件を変更した場合は、同じ水準にはなりません。
精算方法は金融機関によって異なります
ここも押さえておきたい点です。全国銀行協会は、未払利息の精算の方法は金融機関によって異なると書いています。一律のルールがあるわけではないということです。
つまり、未払利息がいつ、どういう形で請求されるのかは、自分が借りる金融機関の契約内容を見ないと分かりません。一般的な解説記事を読んでも、自分のローンの答えにはならないということです。ここが次の項目につながります。
自分のローンにこのルールがあるかを確認します
ここまで「一般的に」「通常は」という書き方をしてきました。これは私が言葉を濁しているのではなく、全国銀行協会の説明自体が「一般的に」「通常」という表現を使っているためです。
裏を返せば、そうでない商品もあるということです。5年ルールや125%ルールを設けていない商品では、金利が上がったタイミングで返済額がそのまま反映されます。先送りされない代わりに、上がり幅に上限もありません。どちらが良いという話ではなく、仕組みが違うので備え方が変わるということです。
商品説明書で見る4か所
金融機関は住宅ローンの商品説明書を用意しています。申込前でも受け取れますし、ウェブサイトに掲載されていることも多いものです。確認するのは次の4か所です。
- 金利の見直し時期……年2回か、それ以外か。基準日はいつか
- 返済額の見直し時期……5年ごとと書かれているか、毎回反映と書かれているか
- 返済額の増加幅の上限……125%の記載があるか、上限なしか
- 未払利息が生じた場合の取扱い……いつ、どう精算されるのか
4番目まで書かれていない場合は、窓口で確認します。「未払利息が出たとき、それはいつ、どのように精算されますか」と聞けば、確認したい内容が伝わります。その場で回答が出ない場合は、書面での回答を依頼します。
複数の金融機関に事前審査を出す方は、そのタイミングで揃えて確認しておくと比べやすくなります。審査を出す順番と時期の考え方は「住宅ローンの事前審査はいつ出すか【2026年版】仮審査1社・本審査複数社で進めた順番を施主が解説」にまとめています。
元金均等返済を選ぶ場合は前提が変わります
ここまでの話は、すべて元利均等返済を前提にしています。毎月の返済額を一定にして、その内訳で元金と利息を調整する方式です。多くの方が選ぶのはこちらです。
もう一つ、元金均等返済という方式があります。毎月返す元金の額を一定にして、そこに利息を上乗せする方式です。返済額は最初が高く、返済が進むほど下がっていきます。この方式では返済額を一定に保つ前提がないため、5年ルールや125%ルールという考え方自体が当てはまりません。金利が上がれば、その分が返済額にそのまま乗ります。
取り扱っていない金融機関もあるので、検討する場合は事前に確認が必要です。
ルールの有無にかかわらず、返済余力を残すことが重要です
ここまで見てきたとおり、5年ルールと125%ルールは返済額の急変を抑える仕組みであって、利息や残高を減らす仕組みではありません。重要なのは、借入額を抑えて毎月の負担を小さくし、金利上昇時にも対応できる現金を残すことです。
先ほどの試算でも、返済額129,793円が据え置かれる前提では、残高5,000万円のときは年3.12%、約4,338万円まで減った後は年3.59%が未払利息の発生水準でした。一方、借入当初から金額だけを小さくしても返済額も同じ割合で下がるため、発生金利は変わりません。借入額を抑える効果は、未払利息の発生水準ではなく、毎月返済額と利息額を小さくする点にあります。
そのうえで、私が現実的だと考えているのは次の順番です。
- 借入額そのものを抑える……いちばん確実で、契約前にしかできません
- 手元の現金を残しておく……金利が上がったときに繰り上げ返済という手を選べる状態にしておきます
- 見直しの時期を把握しておく……返済額が変わるタイミングを知らないまま迎えないようにします
1番目は、金利の話が始まるより前の段階で決まります。頭金と現金の考え方は「注文住宅の頭金はいくら必要?【2026年版】フルローンでも現金が要る理由を施主が解説」で整理しました。全期間固定と比較する場合は「フラット35のメリット・注意点比較」も判断材料になります。
よくある質問
5年ルールがあれば、5年間は金利が上がっても損しませんか
損をしないわけではありません。5年間変わらないのは毎月の返済額であって、多くの商品では金利を半年ごとに見直します。金利が上がった分は利息として計上され、その分だけ元金に充てられる金額が減ります。支払いが減っているのではなく、残高の減り方が遅くなっている状態です。6年目の返済額は再計算されますが、125%ルールが働けば遅れを一度に解消できない場合があります。
125%ルールがあれば、返済額は1.25倍までしか上がりませんか
1回の見直しでの増加幅が1.25倍までという意味です。次の見直しでは、その時点の返済額を基準にさらに1.25倍まで上がる可能性があります。また、上限を超えて必要だった分がなくなるわけではなく、元金の減りが遅くなります。未払利息が発生した場合の精算方法も金融機関ごとに異なります。毎月返済額に上限があっても、総返済額に上限が設けられるわけではありません。
未払利息はどれくらい金利が上がると発生しますか
35年・当初0.5%という条件での私の試算では、借入直後なら年3.12%、返済額を据え置いたまま5年返済した後なら年3.59%を超えたあたりから、1か月分の利息が返済額を上回ります。この水準は借入額だけを変えても同じです。ただし、当初金利・返済期間・返済額の見直し条件が違えば発生水準も変わります。
どの金融機関にも5年ルールと125%ルールがありますか
全国銀行協会の説明でも「一般的に」「通常」という書き方がされており、すべての商品に共通するとはされていません。ルールを設けていない商品では、金利が上がったタイミングで返済額に反映されます。先送りされない代わりに、上がり幅の上限もありません。申込前の商品説明書では、返済額の見直し時期・増加幅の上限・未払利息の取扱いの3点を確認する必要があります。
元金均等返済にすればこの問題は避けられますか
元金均等返済は毎月返す元金を一定にする方式なので、返済額を一定に保つ前提がなく、5年ルールや125%ルールという考え方が当てはまりません。金利上昇が先送りされない代わりに、返済額へそのまま反映されます。当初の返済額が元利均等より高くなるため、借入額の審査に影響することもあります。取り扱っていない金融機関もあるので、事前の確認が必要です。
いま変動で借りています。何をしておけばよいですか
最初に、次の返済額見直しがいつなのかを確認します。そのうえで、返済予定表から現在の残高を把握します。返済額が同じなら、残高が少ないほど金利上昇時の利息額は小さくなります。手元に現金を残しておくと、金利が上がったときに繰り上げ返済を選べます。金利の動きは読めませんが、残高と手元資金は自分で動かせる部分です。
まとめ:先送りされているのは負担であって、なくなってはいません
5年ルールと125%ルールは、返済額の急変から家計を守るための仕組みです。それ自体は借りる側にとってありがたいものです。ただし守っているのは毎月の返済額であって、支払う総額ではありません。この違いを知らずに「上限があるから安心」と受け取ると、5年後や完済間際に想定していなかった金額が出てきます。
私自身も変動金利で組んでいます。避けるべき選択だとは考えていません。仕組みを知ったうえで選ぶのか、知らないまま選ぶのかの差が大きいというのが、調べ直してみての実感です。実際、住宅金融支援機構の調査でも、借りた人のおよそ半数が返済額の見直しルールについて不安を残しているという結果が出ています。
最後に要点を並べます。
- 多くの商品では金利を半年ごとに見直します。5年間据え置かれるのは返済額のほうです
- 金利が上がると、同じ返済額のなかで元金に充てられる分が減ります
- 125%ルールが上限を設けるのは毎月の返済額だけで、総返済額に上限はありません
- 今回の試算では、適用金利が3%台になると未払利息が発生します。発生水準は当初金利や返済期間で変わります
- 未払利息の精算方法は金融機関によって異なります。商品説明書で確認します
- 借入額を抑えて毎月の負担を小さくし、金利上昇に備える現金を残すことが重要です
金利タイプと借入先を比べる手順は「住宅ローンはどこで借りるか【2026年版】金利だけで決めない比べ方を施主が解説」、夫婦で借りる場合の組み方は「ペアローンのメリット・注意点【2026年版】|共働き夫婦の住宅ローン選び方」にまとめています。
【PR】金利より先に、借入額を決める材料をそろえる
金利がどこまで上がるかは誰にも読めません。読めない前提で効いてくるのは、借入額と手元に残す現金です。同じ土地条件・同じ要望で複数社に間取りと資金計画を依頼すると、総額の幅が見えて、返済に無理のない借入額を先に決められます。
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