注文住宅では、契約時・着工時・上棟時・引き渡し時など、工事の進行に合わせて支払いが発生します。住宅ローンを一括で実行する金融機関では、融資金を受け取る前に着工金や中間金の支払期日が来るため、資金の時間差を埋める準備が必要です。本記事では、支払い時期の確認方法と、つなぎ融資・分割実行を含む資金の組み方を整理します。
結論から言うと、私なら住宅会社から支払いの時期と割合を書面でもらい、その日程に対応できる金融機関を選びます。一括実行型の住宅ローンでは、引き渡し前の支払いを自己資金やつなぎ融資で用意する必要があります。一方、土地先行融資や分割実行に対応する金融機関もあるため、先に住宅会社の支払条件を把握することが判断の出発点です。
建売住宅やマンションでは、手付金などを除く残代金を引き渡し時に支払う契約が一般的です。注文住宅では、工事請負契約時・着工時・上棟時・引き渡し時など、工事の進行に合わせて代金を複数回に分ける契約があります。
この記事では、支払いが何回に分かれるのか、なぜ住宅ローンが間に合わないのか、その差をつなぎ融資などでどう埋めるのかを順にまとめます。あわせて、土地から買う場合の支払い、住宅ローンに入りきらない支出のために残しておく現金、商談段階で会社に聞く質問、支払いに間に合わないと分かったときの選択肢まで扱います。
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注文住宅は完成前にも支払いが発生する
工事期間は数か月から半年以上に及びます。その間、材料費も人件費も先に出ていきますので、住宅会社が全額を立て替えて工事を進めるわけにはいきません。そのため、工事の進み具合に応じて代金を受け取る形になっています。
私は建設資材メーカーに十数年勤めていましたので、資材が現場に納まるタイミングと、その代金が動くタイミングは何度も見てきました。基礎、構造材、屋根、外装、内装と、工事が進むごとにまとまった支払いが発生します。分割払いは住宅会社の都合というより、工事という仕事の性質から来ているものです。
4回に分けて支払うケースが多い
回数と名称は会社によって違いますが、次のような区切りが目安になります。それぞれ「何に対する支払いか」と「確認しておくこと」を並べました。
| 時期 | 呼び方の例 | 何に対する支払いか | 確認しておくこと |
|---|---|---|---|
| 工事請負契約のとき | 契約金・着手金 | 請負代金の一部前払い | 契約書に書かれた割合と支払期日 |
| 工事を始めるとき | 着工金 | 基礎工事などの着工にかかる費用 | 地鎮祭や地盤改良の費用が別か |
| 上棟したとき | 中間金・上棟金 | 構造材や屋根までの工事分 | 上棟の予定日と支払期日のずれ |
| 引き渡しのとき | 最終金・残金 | 残りの請負代金と変更分の精算 | 変更契約で増えた分がここに乗るか |
回数が3回の会社もあれば、5回に分ける会社もあります。回数だけで判断せず、各回の割合と支払期日を請負契約書で確認します。
割合は会社ごとに設定されている
4回に分ける場合でも、均等に4分の1ずつとは限りません。契約時の割合が大きい会社もあれば、引き渡し時に多く残す会社もあります。この割合は、工事請負契約書の「請負代金の支払い方法」などの条項に記載されます。契約前に条項を確認し、金額へ換算した支払い表を書面でもらいます。
ここで見落としやすいのが、金額ではなく割合で書かれている場合です。打ち合わせの中で仕様を追加して請負代金が増えると、割合に連動して各回の支払額も増えます。増えた分をいつ支払うのかは、会社によって扱いが違いますので、変更契約のたびに確認してください。
工期が延びたときに支払期日がどう動くか
もう一つ確認しておきたいのが、工事が予定どおりに進まなかった場合の扱いです。中間金の支払期日が「上棟後◯日以内」と工事の進み具合に紐づいている場合、上棟が遅れれば支払いも後ろにずれます。一方、「◯月◯日まで」と日付で固定されている場合は、工事が遅れても支払期日は動きません。
この違いは、つなぎ融資を使う方にとって特に大きな意味を持ちます。つなぎ融資は借りている期間に応じて利息がつきますので、引き渡しが後ろにずれれば、その分だけ利息も増えます。契約書の支払期日が日付なのか工程に紐づいているのかは、契約前に読んでおいてください。
複数社を検討している段階であれば、支払いの回数と割合も比較項目に加えておくと後が楽になります。見積書を揃えて比べる手順はハウスメーカーの相見積もり完全ガイドにまとめていますので、あわせて確認してみてください。
一括実行型の住宅ローンが引き渡し時になる理由
一括実行型の住宅ローンでは、審査に通っていても、着工金や中間金の時点では融資金を受け取れません。ただし、金融機関によっては土地先行融資や分割実行に対応します。「住宅ローンは完成時にしか使えない」と一律に考えず、商品ごとの実行条件を確認する必要があります。
完成後に資金受取と抵当権設定を行う商品がある
一括実行型の商品では、完成した建物の登記と抵当権設定に合わせて融資を実行します。工事途中は完成建物の登記ができないため、着工金や中間金には同じ住宅ローンをそのまま使えない場合があります。ただし、土地への先行融資や建物資金の分割実行など、金融機関が別の実行方法を用意していることもあります。
住宅金融支援機構の【フラット35】手続案内では、竣工現場検査に合格して適合証明書の交付を受けた後、借入契約・資金受取・登記・抵当権設定へ進む流れが示されています。これは完成後に一括実行する商品の具体例です。
着工金と中間金は住宅ローン以外で用意する
そうなると、引き渡し前に発生する支払いは次のいずれかで用意することになります。
- 自己資金(貯蓄や親族からの資金援助)で支払う
- つなぎ融資を利用し、引き渡し時に住宅ローンでまとめて返済する
- 住宅ローンを数回に分けて実行してもらう(分割実行に対応した金融機関を選ぶ)
注意したいのは、この構造を知らないまま自己資金の使い道を先に決めてしまうことです。頭金として入れる予定だったお金や、土地の購入で使ったお金と、着工金に充てるお金は別に考える必要があります。土地と建物にどう予算を割り振るかは土地と建物の予算配分で整理していますので、そちらもご覧ください。
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つなぎ融資の仕組みと、かかる費用の確認手順
引き渡し時に住宅ローンで一括返済する短期の借り入れ
つなぎ融資は、住宅ローンが実行されるまでの間だけ借りる短期の融資です。土地の購入資金、着工金、中間金といった先に必要になるお金を、必要な時期に分けて借りられます。そして引き渡しのときに住宅ローンが実行され、その資金でつなぎ融資をまとめて返済します。
借りられる回数や1回あたりの上限は金融機関ごとに決まっています。住宅ローンを申し込む金融機関でつなぎ融資も扱っているとは限りませんので、住宅ローンの金融機関を決める前に、この点を確認しておく必要があります。
住宅ローンとは別に発生する費用の項目
つなぎ融資を使うと、住宅ローンの利息とは別にお金がかかります。金額は金融機関と借入期間で変わりますので、項目を押さえたうえで見積もりを出してもらってください。
- 借入期間分の利息(住宅ローンとは別の金利条件が設定されます)
- 事務手数料(借入1回ごとにかかるか、契約単位かは金融機関によります)
- 金銭消費貸借契約書に貼る印紙税
- 金融機関によっては、団体信用生命保険が付かない期間が生じます
印紙税については、国税庁タックスアンサーNo.7140に金銭消費貸借契約書の税額が示されています。契約金額が1,000万円超5,000万円以下では2万円、5,000万円超1億円以下では6万円です。電子契約の扱いを含め、実際に作成する契約書が課税文書に該当するかは金融機関へ確認します。
国税庁の建設工事請負契約書の軽減措置では、記載金額が100万円を超え、令和9年3月31日までに作成される対象契約書について税率が軽減されます。1,000万円超5,000万円以下は1万円、5,000万円超1億円以下は3万円です。この軽減は建設工事請負契約書の制度であり、金銭消費貸借契約書の税額とは分けて確認します。
利息は借りた期間の長さで決まる
つなぎ融資の利息は、借りた金額と借りていた期間で決まります。同じ金額を借りても、着工から引き渡しまでが4か月の会社と7か月の会社では、負担する利息が変わります。工期の長さが、そのまま費用の差になって出てくるということです。
また、土地の決済から借り始めるのか、着工金から借り始めるのかでも期間は変わります。土地を先に買って設計に時間をかける進め方は、じっくり検討できる反面、つなぎ融資の期間が延びます。設計期間を長く取るのであれば、その分の利息も資金計画に入れておいてください。
利息の支払い方も金融機関によって違います。借入期間中に毎月支払う方式と、住宅ローン実行時にまとめて精算する方式があり、前者であれば工事期間中の家計から支出が出ていきます。賃貸にお住まいであれば、家賃と重なる期間がどのくらいになるかもあわせて計算しておくと安心です。
金融機関に確認する4つの手順
- その金融機関がつなぎ融資を扱っているか、住宅ローンとセットの条件があるかを聞く
- 何回まで分けて借りられるか、1回あたりの上限はいくらかを確認する
- 住宅会社の支払いスケジュールを見せて、実際にかかる費用の総額を試算してもらう
- つなぎ融資の費用を含めた総額で、複数の金融機関を比べる
3つ目まで進めると、住宅ローンの金利だけを比べていたときとは順位が変わることがあります。金利が少し低くてもつなぎ融資を扱っていない金融機関では、自己資金で埋めるか別の方法を探すことになります。
土地から買う場合は、支払いがもう1つ前に来る
土地の決済は建物の工事より先に発生する
土地を持っていない場合は、建物工事の着工より前に土地代金の支払いが発生します。売買契約時に手付金、決済時に残代金を支払う契約が一般的で、登記費用や仲介手数料が加わる場合もあります。
つまり、土地から買う方は「土地の決済」「着工金」「中間金」の3つが住宅ローンの実行前に並ぶことになります。自己資金だけで賄うのは負担が大きくなりますので、つなぎ融資や土地先行融資の検討がより現実的になります。
土地先行融資と分割実行という選択肢
金融機関によっては、土地の分だけ先に住宅ローンを実行し、建物の完成後に残りを実行する形に対応しています。この方式であれば土地の分については住宅ローンの金利が適用されますが、建物が完成するまでの間、土地分の返済が始まります。
どちらが有利かは、借入額、工事期間の長さ、手数料の設定で変わります。土地を先に契約する場合の資金の組み立て方については土地と建物の予算配分の記事でも触れていますので、土地探しの段階の方はそちらから読んでいただくと流れがつかめます。
住宅ローンに入りきらない支出のために現金を残す
支払いスケジュールを組むときに抜けやすいのが、請負代金以外の支出です。次のような費用は、住宅ローンに含められない場合や、含められても引き渡し前に立て替えが必要になる場合があります。
- 外構工事の費用(別業者に依頼する場合は特に注意が必要です)
- カーテン、照明器具、エアコン、家具や家電
- 引っ越し費用、荷物の一時保管費用
- 登記費用(登録免許税と司法書士への報酬)
- 火災保険料と地震保険料
- 地鎮祭や上棟のときの費用
- 入居後に来る固定資産税と都市計画税
これらを支払ったうえで、生活のための現金も手元に残しておく必要があります。いくら残すべきかの考え方は注文住宅完成後に残す現金の記事で計算方法まで整理しています。支払いスケジュールを作るときは、この記事の金額を先に確保したうえで組み立ててください。
支払いスケジュール表を自分で作る
ここまでの内容は、1枚の表にまとめると判断しやすくなります。会社が用意する資金計画書は総額の内訳が中心で、いつ現金が出ていくかまでは書かれていないことがあります。
商談の段階で会社に聞くこと
- 請負代金の支払いは何回に分かれ、それぞれ何割ですか
- それぞれの支払期日は、どのタイミングから何日以内ですか
- 変更契約で金額が増えた場合、その分はいつ支払いますか
- 地盤改良や外構は、この支払いスケジュールに含まれていますか
- つなぎ融資を使う施主の場合、必要書類はいつ出していただけますか
- 工事が遅れた場合、支払期日はどのように扱われますか
表に入れる4つの列
聞き取った内容は、次の4つの列で並べると全体が見えます。
| 時期 | 支払う金額 | どこから出すか | 支払い後に残る現金 |
|---|---|---|---|
| 土地の決済 | 土地代金と諸費用 | 自己資金・つなぎ融資 | 残高を記入 |
| 工事請負契約 | 契約時の支払い分 | 自己資金 | 残高を記入 |
| 着工 | 着工金 | つなぎ融資など | 残高を記入 |
| 上棟 | 中間金 | つなぎ融資など | 残高を記入 |
| 引き渡し | 最終金と諸費用 | 住宅ローン・自己資金 | 残高を記入 |
大切なのは一番右の列です。どの時点でも手元の現金がマイナスにならないか、そして引き渡し後に生活費が残るかを見ます。契約前に確認しておきたい項目は注文住宅の契約前に確認すべき12のチェックリストにもまとめていますので、この表とあわせて使ってみてください。
支払いに間に合わないと分かったときの選択肢
気づいた時点で早めに相談する
表を作ってみて、どこかの時点で足りないと分かった場合、そこから打てる手はいくつかあります。逆に、期日の直前になるほど選択肢は減ります。言い出しにくい話ではありますが、早い段階で住宅会社と金融機関の両方に相談してください。
検討できる手立て
- つなぎ融資の利用や、借入回数・金額の見直しを金融機関に相談する
- 支払いの時期や回数を調整できないか住宅会社に相談する
- 着工前であれば、仕様を見直して請負代金そのものを下げる
- 親族からの資金援助を受ける場合は、贈与税の特例の適用条件を税務署や税理士に確認する
- 外構や家具家電など、引き渡し後に回せる支出を先送りする
避けたいのは、金利の高い借り入れで一時的に埋めることです。住宅ローンの実行前に新たな借り入れをすると、審査に影響する可能性があります。つなぎ融資以外の借り入れを検討する場合は、住宅ローンを申し込んだ金融機関に先に相談してください。
そもそもの総額に無理がある場合は、価格帯の見直しも選択肢に入ります。どの価格帯でどんな違いが出るのかはハウスメーカーを坪単価帯で選ぶ記事で整理しています。
よくある質問
つなぎ融資を使わずに済ませる方法はありますか
引き渡し前に必要な金額を自己資金で用意できる場合、または住宅ローンの分割実行に対応した金融機関を選べる場合は、つなぎ融資を使わずに進められます。住宅会社によっては支払い時期の相談に応じてもらえることもありますので、契約前に聞いてみる価値はあります。
着工金を支払う時点で、住宅ローンの審査は終わっていますか
本審査へ進む時期は金融機関と契約内容によって異なります。着工前に承認を得ていても、一括実行型では資金受取が引き渡し時になる場合があります。審査承認日と各回の融資実行日を分けて確認します。
契約時の支払い割合が大きい会社は避けたほうがよいですか
割合が大きいこと自体で判断するのは難しいところです。見るべきなのは、その割合で自分の資金繰りが回るかどうかと、割合の根拠を説明してもらえるかどうかです。工事の進み具合に対して前払いが大きすぎると感じた場合は、その理由を聞いてみてください。
変更契約で増えた分は、いつ支払うことになりますか
引き渡し時の最終金にまとめて乗せる会社が多いのですが、変更のたびに精算する会社もあります。最終金に乗せる方式の場合、打ち合わせを重ねるほど最後の支払額が膨らみますので、変更契約のたびに現時点の最終金がいくらになっているかを確認しておくと安心です。
支払いは振込だけですか。クレジットカードは使えますか
請負代金は銀行振込が基本です。金額が大きいため、振込の上限額や当日の手続きにかかる時間を、事前に金融機関へ確認しておいてください。インターネットバンキングには1日あたりの振込限度額が設定されていることがあり、期日当日に窓口へ行くことになる場合があります。オプション費用の一部などをカード払いにできる会社もありますが、扱いは会社ごとに異なりますので個別に確認してください。
まとめ:支払いの時期は、金融機関を決める前に確認する
注文住宅の支払いについて押さえておきたいのは、次の3点です。
- 代金は工事の進み具合に応じて分割で支払い、完成前にもまとまった支払いが発生する
- 住宅ローンの資金が入るのは引き渡しのときで、それまでの支払いは自己資金かつなぎ融資などで埋める
- 支払いの回数と割合は会社ごとに違うため、契約書の条項で確認したうえで金融機関を選ぶ
この順番を逆にして、金融機関を決めてから支払いスケジュールを知ると、選び直しが必要になることがあります。商談の段階で支払いの時期と割合を書面でもらい、それを持って住宅ローンの相談に行く。手間はかかりますが、この順序で進めるだけで資金繰りの不安はかなり減ります。
家づくり全体の工程と支払い時期の関係は、注文住宅を建てる流れ・手順で整理しています。
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