コンセントの話になると、どこを見ても「多めに付けたほうがいい」と書かれています。ただ、何個が多めなのかは書かれていません。標準で何個入っているかを知らないまま「多めに」と言っても、打ち合わせでは何も決まりません。
結論を書きます。コンセントで最初に聞くのは「この家の標準では何個入っていますか」と「1口追加するといくらですか」の2つです。この2つがわかれば、あとは家電の数との差を引き算して金額に直すだけになります。私なら、配置を考える前にこの2つを聞きます。
なぜ標準を聞くところから始めるのか。コンセントの数には、建物の性能と違って公的な基準がまったく存在しないからです。この記事では、そのことを条文で確認したうえで、標準個数から必要数を逆算して金額に直すまでの手順を整理します。
【PR】電気工事がどこまで標準に含まれるかを、先に比べる
コンセントの標準個数と追加単価は会社ごとに違い、カタログには書かれていません。複数社から間取りプランと資金計画を取り寄せると、電気工事がどこまで標準に入っているかを打ち合わせ前に確認できます。
この記事でわかること
- コンセントの数に公的な基準が存在しないことと、その確認方法
- 標準個数と追加単価という、最初に聞くべき2つの数字
- 必要数を家電から逆算する手順
- 差分を金額に直して見積もりに載せるまでの流れ
- 200Vの電源が要る設備を、先に伝えておく理由
- 打ち合わせでそのまま使える質問リスト
結論:先に聞くのは「標準で何個入っていますか」です
打ち合わせの席で図面を広げて「ここにも欲しい」と足していく進め方は、順番が逆になりやすいところです。足した結果がいくらになるかが、その場ではわからないためです。
先に押さえるのは次の2つです。
- この家の標準仕様で、コンセントは何個(何口)入っていますか
- 1口追加すると、いくらになりますか
この2つは、営業担当か設計担当がその場で答えられる数字です。答えが出た時点で、「(必要数 − 標準個数)× 追加単価」という計算ができるようになります。金額が見えれば、足すか削るかの判断はすぐ付きます。
コンセントの数には、公的な基準がありません
標準個数を聞く必要があるのは、比べるための物差しが世の中に用意されていないからです。これは調べて確認できます。
建築基準法にも施行令にも規定がありません
建築基準法と建築基準法施行令を全文で検索すると、住宅のコンセントの数や位置についての規定は出てきません。施行令に「コンセント」という語は一度だけ登場しますが、それは非常用エレベーターの乗降ロビーに設ける「非常コンセント設備」についての条文で、住宅のコンセントとは別の話です。
建築基準法は、居室の採光を床面積の7分の1以上(法28条1項)、天井の高さを2.1m以上(施行令21条)というように、暮らしの下限を数字で決めている法律です。そこにコンセントが入っていないという事実は、裏返せば「何個であっても違法にはならない」ということを意味します。
住宅性能表示制度の評価対象にも入っていません
住宅の性能を第三者が評価する住宅性能表示制度でも、新築住宅の必須項目は4分野です。構造の安定、劣化の軽減、維持管理・更新への配慮、温熱環境の4つで、電気設備は評価の対象になっていません。
つまり、断熱性能ならUA値、耐震ならば等級という共通の物差しがあるのに対して、コンセントには会社をまたいで比べられる数字が存在しません。制度の詳細は住宅性能評価とはにまとめています。
この構造は、坪単価とよく似ています。注文住宅の費用と坪単価の相場でも書いたとおり、決まったルールがない数字は各社が自分で決めます。だから比べるには、まず相手の前提を聞くしかありません。
必要数は、家電から逆算します
標準個数を聞いたら、次は自分に必要な数を出します。ここは部屋の広さではなく、そこに置くものの数から数えます。
置くものを書き出して、口数で数える
常時挿しっぱなしになるものと、使うときだけ挿すものを分けて数えると、必要な口数が具体的になります。
| 場所 | 挿しっぱなしになるもの | ときどき使うもの |
|---|---|---|
| リビング | テレビ、レコーダー、ゲーム機、ルーター、ロボット掃除機の充電台 | 掃除機、スマホ充電、扇風機、季節家電 |
| ダイニング | (なし) | ホットプレート、電気鍋、卓上調理器 |
| キッチン | 冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、トースター、電気ケトル | ミキサー、ハンドブレンダー |
| パントリー | 二台目の冷蔵庫・冷凍庫 | ホームベーカリー、調理家電の一時使用 |
| 洗面・脱衣 | 洗濯機、乾燥機、電動歯ブラシの充電 | ドライヤー、アイロン、暖房器具 |
| 寝室 | 照明、加湿器、スマホ充電(ベッド両側) | 掃除機、季節家電 |
| 各収納 | コードレス掃除機の充電 | (なし) |
| 玄関・廊下 | インターホン親機、スマートロックの機器 | 掃除機の中継 |
| 屋外 | (なし) | 高圧洗浄機、電動工具、季節の照明 |
この表はそのまま使うものではなく、自分の家電に置き換えて数えるための型です。挿しっぱなしになるものの合計が、その部屋で最小限必要な口数になります。
家具の配置と高さを先に決める
個数と同じくらい効くのが、床からの高さです。コンセントは壁のどこかに付ければよいわけではなく、その前に何が置かれるかで使えるかどうかが決まります。
- ソファの背もたれに隠れる高さだと、抜き差しができません
- テレビ台の後ろは、隠したいので低い位置にまとめたい場所です
- キッチンカウンター上は、天板から少し上に必要です
- 掃除機の充電は、収納棚の内部で棚板の高さに合わせます
家具の寸法が決まっていないと、この判断はできません。打ち合わせに家具のサイズを持って行くと、位置の話が一度で済みます。
差分を金額に直して、見積もりに載せる
必要数が出たら、標準個数との差を追加単価で掛けます。
(必要な口数 − 標準の口数)× 1口あたりの追加単価 = 追加になる金額
ここで大事なのは、この金額を見積書に項目として載せてもらうことです。口頭で「何個か足しておきます」と言われた分は、後から金額が変わっても確認できません。電気工事が一式でまとめられている見積書の場合は、内訳を出してもらってください。見積書の読み方は注文住宅の見積書をAIで比較する方法で扱っています。
新築時に足す場合と、住んでから足す場合の違い
金額そのものは会社によって違うので、ここでは仕組みの違いを押さえておきます。
| 新築時(壁が塞がる前) | 入居後 | |
|---|---|---|
| 工事の内容 | すでに開いている壁の中で配線を分岐させます | 壁や天井を開口し、配線を通してから復旧します |
| 必要になる作業 | 配線と器具の取り付け | 開口、配線、ボード補修、クロスの張り替え |
| クロスの仕上がり | 全面を新しく張ります | 補修部分と既存部分で差が出ることがあります |
| 依頼先 | 工事を担当している住宅会社 | 電気工事店やリフォーム会社を別に探します |
建設資材メーカーに十数年勤めた経験から言うと、この種の金額差は材料費ではなく段取りの数で決まります。コンセント本体の価格は、どちらの場合もほとんど変わりません。差が付くのは、壁を開けて元に戻すという工程が加わるかどうかです。だから「新築時のほうが安い」という説明には根拠があります。
ただし、だからといって際限なく足す理由にはなりません。差分を金額で見てから決めるという順番なら、必要な分だけを判断できます。
【PR】標準仕様の範囲は、会社ごとに違います
電気工事がどこまで標準に含まれるかは、カタログではなく見積書と仕様書に書かれています。同じ要望で複数社から資金計画を取り寄せると、標準の範囲そのものを比べられます。コンセントに限らず、照明やスイッチの扱いも会社ごとに差が出る部分です。
見落としやすい場所
標準の配置から漏れやすいのは、居室ではない場所です。住んでから気づくことが多い順に並べます。
| 場所 | 用途 | 設計時に決めること |
|---|---|---|
| 収納・クローゼット内 | コードレス掃除機の充電 | 棚板の高さに合わせた位置。扉を閉めてもコードが挟まらないか |
| パントリー | 二台目の冷蔵庫、調理家電 | 冷蔵庫を置くなら専用回路が要るかどうか |
| 玄関・シューズクローク | インターホン親機、スマートロック機器 | 機器の交換を見込んで、手が届く位置に置けるか |
| 階段・廊下 | 掃除機の中継、足元灯 | 掃除機のコードが届く間隔になっているか |
| 洗面・脱衣 | 乾燥機、アイロン、暖房器具 | 洗濯機用とは別に確保されているか |
| 屋外 | 高圧洗浄機、電動工具、季節の照明 | 防水型か。玄関前とガレージ側の両方に要るか |
収納の中については、棚の位置や奥行きと合わせて考える必要があります。収納計画そのものは注文住宅の収納計画ガイドにまとめました。
200Vの電源が要る設備は、先に伝えます
一般的なコンセントは100Vですが、設備によっては200Vが必要になります。200Vは分電盤からの専用回路になるため、あとから足すと配線と分電盤の両方に手が入ります。該当しそうなものは、早い段階で伝えておく項目です。
- IHクッキングヒーター:ガスからIHに変更する場合は特に確認が要ります
- エアコン:畳数の大きい機種は200Vのものがあります
- 電気自動車の充電:普通充電は単相200Vの専用回路が必要です
- 電気温水器・エコキュート:給湯方式によって扱いが変わります
- 食器洗い乾燥機:機種によって異なります
電気自動車を今は持っていない場合でも、駐車場まで配管だけ通しておく「先行配管」という方法があります。壁の中と屋外の経路を先に確保しておけば、後から充電設備を付けるときの工事が小さく済みます。費用がかかる方法なので、車の買い替え時期と合わせて判断するのが現実的です。
エアコンの設置に関わる穴と配管の位置はエアコンの穴(スリーブ)を決める時期、蓄電池や太陽光と組み合わせる場合は注文住宅の蓄電池は必要かを併せて確認してください。
スイッチと分電盤も、同じ工程で決まります
コンセントの打ち合わせでは、スイッチと分電盤も同じ図面の上で決まります。あとから動かしにくい点も同じなので、まとめて確認しておくと手戻りが減ります。
スイッチは高さと、どこで消せるかを見る
スイッチで確認したいのは、位置そのものより動線のどこで操作できるかです。階段や廊下のように通り抜ける場所は、両端で同じ照明を操作できる配線(3路スイッチ)になっているかを図面で確認します。片側にしかないと、消すために戻ることになります。
高さも決めておく項目です。荷物を持ったまま肘で押せる高さにするか、子どもが届く高さに合わせるかで変わります。玄関や廊下で人感センサー付きにする場合は、点灯する範囲と、消えるまでの時間を調整できる機種かどうかを聞いておくと、住んでからの不便が減ります。
分電盤は位置と、空き回路の数を確認する
分電盤は、動作音が気になることがあるため寝室のすぐ隣は避けたい機器です。一方で、ブレーカーが落ちたときに手が届かない場所では困ります。納戸や廊下の収納内など、手は届くが生活空間から少し外れた場所が扱いやすい位置になります。
もう一点、聞いておく価値があるのが空き回路がいくつ残るかです。将来、エアコンを増やす、電気自動車の充電設備を付ける、蓄電池を導入するといった場面で、空き回路があるかどうかが工事の規模を左右します。図面には回路の一覧が載っているので、余裕の有無をその場で確認できます。
決める時期は、壁が塞がる前までです
コンセントの位置と数を変更できるのは、上棟後から断熱材が入って石膏ボードが張られるまでの間です。壁の中が見えている間は配線を動かせますが、塞がったあとは開口が必要になります。
契約後に決める項目には、それぞれ締め切りがあります。全体の期限の並びは注文住宅の契約後に決めることの期限に整理しました。あわせて、通信配線は有線LAN・Wi-Fi計画をいつ決めるかで扱っています。コンセントと情報コンセントは同じ工程で決まるので、まとめて考えると手戻りが減ります。
打ち合わせで使う質問リスト
- この家の標準仕様で、コンセントは何個・何口入っていますか
- 1口追加すると、いくらになりますか。見積書のどの項目に入りますか
- 標準の配置は、どういう考え方で決まっていますか
- 屋外コンセントは標準に含まれますか。何箇所ですか
- 収納の中やパントリーは、標準の配置に入っていますか
- 200Vが要る設備の予定を伝えたいのですが、いつまでに決めれば間に合いますか
- 専用回路が必要になるのは、どの機器ですか
- 配線の位置を最終確認できるのは、いつの時点ですか
- 現場で位置を確認する機会はありますか。立ち会えますか
最後の2つは特に有効です。図面の上では想像しにくい高さや位置も、壁が塞がる前に現場で立って確認すると、ずれに気づけます。引き渡し前の確認項目は注文住宅の引き渡し前チェックリストにまとめています。
よくある質問
コンセントは何個あれば足りますか
一律の答えはありません。置く家電の数で決まるためです。ただ、数え方には順番があります。挿しっぱなしになるものを部屋ごとに数え、それを下限の口数とし、ときどき使うものを足すという順です。この数え方なら、自分の暮らしに合った数が出ます。他人の「何個がおすすめ」という数字は、その人の家電の数でしかありません。
標準の配置のままだと足りませんか
会社によります。標準の配置は、一般的な間取りに対して過不足が出にくい位置に置かれていることが多いものです。足りなくなりやすいのは、標準が想定していない使い方をする場所です。収納内での充電、パントリーでの調理、屋外での作業などが該当します。自分の暮らしに特有の使い方があるかどうかで判断してください。
口数と個数はどう違いますか
「個数」は壁に付くプレートの数、「口数」は挿し込める差込口の数です。1個のプレートに2口あるものが一般的で、3口のものもあります。見積書や仕様書がどちらで書かれているかを確認してください。「10個」と「10口」では、使える差込口の数が倍違います。この確認を落とすと、金額の比較もずれます。
タコ足配線で対応すればよいのではないですか
一時的な対応としては可能ですが、常時使う家電を電源タップでまとめる前提で個数を減らすのは避けたほうが確実です。タップとコードが床に出ることで、掃除のたびに動かす手間が続きます。加えて、消費電力の大きい家電を1つの回路に集めると容量の問題も出てきます。どの機器に専用回路が要るかは設計段階で確認できます。
図面のコンセント記号が読めません
電気配線図の記号は、打ち合わせの場で担当者に指し示してもらうのが早い方法です。確認したいのは記号の意味そのものより、「この壁のどの高さに、何口が付くのか」という実際の姿です。図面に高さが書かれていない場合は、書き込んでもらってください。位置と高さが記録に残っていれば、現場での確認もできます。
まとめ
- コンセントの数には公的な基準がありません。建築基準法にも施行令にも規定がなく、住宅性能表示制度の評価対象にも入っていません
- だから比べる物差しがなく、標準個数は会社ごとに違います
- 最初に聞くのは「標準で何個入っているか」と「1口いくらか」の2つです
- 必要数は部屋の広さではなく、挿しっぱなしになる家電の数から逆算します
- 差分を金額に直し、見積書に項目として載せてもらいます
- 新築時と入居後で金額が違うのは、材料費ではなく壁を開けて戻す工程が加わるからです
- 200Vが要る設備は専用回路になるため、早い段階で伝えます
「多めに付ける」という助言が使いにくいのは、基準がないものに対して量の話をしているからです。標準と単価という2つの数字を先に押さえれば、あとは自分の家電の数との引き算になります。数ではなく、差額で判断できるようにしておくのが、打ち合わせを短くする方法です。
【PR】タウンライフ家づくり


コメント